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妥協点はどこか―大石まさる「水惑星年代記」シリーズ― [漫画]

先日は、mixi内のコミュニティで私が籍を置かせて戴いているBDの集まりがあり、そちらに参加させていただきました。
とはいうものの、大遅刻をしたせいで、主に二次会からの参加となってしまいましたけれども。発表が面白そうな題材でしたので、かなりもったいなかった気がします。
それでも、楽しい時間を過ごさせて戴きました。最近、何かと日常において鬱々とすることが多かったので、このようなハレの機会に参加できてよかったです。充電というのか、「補給(アルコール燃料を、でしょうか?)」させて戴きました関係で、またしばらくは、鬱々とした日常にも我慢できそうです。

…さて。
今回は、最近購入した漫画について書いていこうかと思います。大石まさる「水惑星年代記」(少年画報社)の一連のシリーズです。

作品世界は、現代から近未来、でしょうか。それに、宇宙やら、ファンタジーやら、恋愛を絡めたりとなかなかバラエティに富んだ短編の連作集になります。

基本、一話完結なんですが、話によっては数話のものもあり、また、時系列は行きつ戻りつしたりして、ばらばらながら、相互の話がしばしばリンクしたり、従前の話の続きであったりします。作者の考えた作品世界の住人を、何人かピックアップして作品にしてみたような、そんな感じでもあります。また、どこかにある書物、年代記の中で、あるエピソードをピックアップして見せているようでもあり、「年代記」のタイトルに似つかわしい、などとも思います。

読んでの感想ですが、まず、既視感があるなぁ、と。
パクリとか、そういったあからさまな嫌な感じというのではないんです。ですが、少なからず、作者の中にも意識はあるのではないか、などと思いますが、いかがでしょうか。
私自身は、美樹本晴彦鶴田謙二を、このシリーズから感じました。

基本の話の内容はラブコメ的なものが多く、美樹本チック(「マリオネット・ジェネレーション辺りと印象がカブります)な印象。
で、短編の連作辺りからか、作品の基本的なつくり(「Spirit of Wonder」イメージして戴ければ幸い)の若干の類似性、描かれる女の子のタイプ、そして、SFの採り入れ方が鶴田っぽいかなぁ、と思います。
…鶴田と印象がかぶったのは、「水惑星…」の冒頭の話が「Spirit of Wonder」中の「少年科學倶楽部」の中の話(妊娠を、図らずも相方以外の人達に公表してしまう辺りの描き方がどうも…)とが私の中での印象が重なったからかもしれません。

とまあ、既視感を覚えつつも、決定的に異なるのは、刊行のペース、ですね。
大石まさるの方が圧倒的に早いです(特に、鶴田…はねぇ…)。読み手としては、新しい作品を楽しませて戴けるということで、ありがたい話です。

しかしながら、一方で、手放しで喜べない部分がないでもない、ように思います。
すなわち、寡作の両者と比較した場合、作画が見劣りするように思うんですね。大石さんや、大石さんのファンの方を侮辱する意図はないんですが…。
私の中では、作品の印象がかぶる分(少し前述しましたが、特に鶴田作品の影響はあるような気がします)、どうしても比較してしまうんですが、明らかに大石…の方が、描線が粗いです。このように丸ペンの線を重ねていくんだったら、鶴田…に限らず、他に細かく丁寧に描く方もいらっしゃるでしょうから、余計にそれが目立つように思います。

ただ、これは、致し方ない部分なのかもしれません。

思うに、ある程度のペースで刊行することを可能にするように大量生産・消費のラインに乗せた作品と、自分がある程度まで納得いくまで描き込んで、完成度は高いものの、大量生産・消費のラインから外れた作品との妥協点をどこに見出すのか、ということなのではないか、ということです。
大石…の方が、大量生産・消費に親和的、なんでしょう。

鶴田謙二の名前を挙げましたので、蛇足ながら、少し。
彼の「Spirit of Wonder」の中で、作品世界を面白く膨らませている一端を担っているのは、アヤしげな科学理論ではないかと思ったりします。
例えば、少年科學倶楽部のシリーズの中で、異端ながら正しいと証明される「エーテル理論」などがそうですね。
この理論にあります「エーテル」、現実世界にありますソレとは異なりまして、確か、アインシュタインによってその存在が否定されるまで、「光が伝わるのに、理論上、何がしかの伝導物質がなくてはならないはずだ」ということから、探し求められた、幻の物質だったりします。
この幻の物質があることを前提に、話が進められていて、なんというのか、知識がくすぐられるというのか、面白い感じがしますね。

大石の作品においても、こういう理論などはバックグランドにあるのかもしれませんが、読み手にはあまり伝わるように描いていないように思います(「続水惑星年代記」に収録されている「AROUND THE WORLD IN 8DAYS」は、多少、その辺りが見えるように思いますが、十分とは感じませんでした)。
そういった点においても、大石…の作品は少々残念に思います。
ただ、これは、SF特有の敷居を作らないために、敢えてその辺りに重点を置かないつくりにしているのかもしれません。
それでも、私のような、ひねた読者からしますと、多少一般受けしなくなったとしても、このようなバックにある理屈は、多少は上手く示してもらいたかったなぁ、と思わずにいられません。

蛇足ながら、鶴田…は、彼の比較的最近の絵柄よりも、Spirit of Wonderの初期の頃の絵柄が好きです、私。
というのも、最近になるに従って、目が大きく描かれるようになっているんですね。その目は、けっこう「ギョロ目」な感じがして、どうも私には今ひとつ。「…昔の絵の方が良かったなぁ。」としばしば思います。
あ、鶴田さんのカラーの原稿は、相変わらず好きなんですけども。特に、彼の描く水の色が好きです。

…と、ここまで書いていて気づきましたが、私、「水惑星年代記」のシリーズ、結構気に入っております。
ここまでに書いてきたことを読まれた方は、「随分と批判的に捉えている」と、感じたかもしれませんけれども、そうではありませんで。「面白いと思うんだけども、絶賛まではちょっと…」という意図で書いたものと捉えていただければ幸いです。…相変わらず、モノを褒めるのが下手で申し訳ないです。

「水惑星年代記」の一連のシリーズ、佳作・良作の類だと思いますので、興味を持たれた方におかれましては、一読されてみてはいかがかと思います。

ということで今回は、SFの復興? いやいや、そこまではいかないなぁ、でも、SFと聞くだけで拒絶しないで戴ければ重畳、という作品もままあるように思いますよ?という話。


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ウメタロウ

「Spirit of Wonder」はちょっと自分も気になりましたが、
あえてスルー(笑)
大量生産かどうかは別にして刊行ペースとネタに関してはうらやましいくらいのモノだと思います。
それを維持できるモチベーションも大したモノだなぁ~と・・・

アトガキや作風を見た感じだと純粋なんだろうなぁ~思ったのは自分だけカナァ~^^;
by ウメタロウ (2007-08-10 13:39) 

true

>思うに、ある程度のペースで刊行することを可能にするように大量生産・消費のラインに乗せた作品と、自分がある程度まで納得いくまで描き込んで、完なん成度は高いものの、大量生産・消費のラインから外れた作品との妥協点をどこに見出すのか、ということなのではないか、ということです。

あれですよ、本人の性格が関わるのは確かですが、
実際にそれがビジネスとして成り立っているかどうかが大きな拠り所だと思いますよ。
富樫先生とかはあんだけめちゃくちゃでも売れてるので正義とかそんな
by true (2007-08-10 17:59) 

粋狂

>ウメタロウさん
 ほぼ月刊ペースで、各話を継続して描いていっているのは、大量生産と呼べるペースではないかと思いますよ。
 …で、作者の方、基本的に、かなり趣味の話を描かれているので、モチベーション自体は高いように感じますけれども、いかがでしょうか。

 確かに作風から判断するに、いい人なんだろうなぁ、と感じますね。私も作風に好感を持っております(気に入った作品でなければ、基本採り上げませんから、私)。


>trueさん
 出版社側の視点からは、さして考えませんでしたので、ものすごく主観的な感想でしかありませんけれども、ビジネスとして成り立っているかどうかは…、どうでしょう。

 そもそも、商業的に話にならないと考えられれば、基本的には商業誌には載りませんから、確かにその側面はもちろんあるでしょうけれども、作画それ自体に関しては、出版社の都合云々よりも、作者本人に拠るもののように思います。
by 粋狂 (2007-08-11 01:41) 

she

大石ファンとしては小馬鹿にされた感がして不快でした
by she (2009-02-09 22:59) 

粋狂

私の書き方が悪いのでしょうが、大石まさるの作品を、私は別に小馬鹿にしてなどいませんけれども…。そもそも、そういう感想を持ったら、感想など書きませんし。

しかしながら、sheさん(今一度、こちらをご覧になるか分かりませんけれども)に、不快な気持ちにさせてしまったのは、事実ですから、こちらが意図しなかったこととはいえ、申し訳ないことです。
お詫び申し上げます。

ただ、他の作品、特に鶴田作品と比較して、私は本文のように既視感を感じたり、描線の荒さを感じたり、また作品世界で描かれる空想科学の理論をSFのテイストを含んだ作品であるなら、もう少しソレを描いて欲しいなぁと思うのは、さほど見当違いの感想ではないと思いますが…。
by 粋狂 (2009-02-10 05:21) 

wd

検索で辿り着きました。
私は鶴田も大石も大好きです。
その立場を明確にした上で書かせてもらえば、
大石に、鶴田と「同じ」アヤシゲな科学理論を期待するのは、どうでしょう?
貴方の文章を拝読する限り、描いたら、
それはそれで「鶴田のパクリ」と言うのではないですか?
SFファンってのは、まあそういうものなのかもしれませんけど。

私は、そういった科学理論があえてスルーされているあたりに、
大石なりの(というか水惑星年代記の)面白さを感じるのですけどね。

あと上の方は、
「面白いと思うんだけども、絶賛まではちょっと…」
というあたりに反応されたのではないでしょうか。
これで「褒めている」とか言われても、
そりゃー小馬鹿にされていると思うよな、と傍目から感じました。以上
by wd (2009-05-07 03:24) 

粋狂

>wdさん
 コメントを戴きまして、ありがとうございます。

>アヤシゲな科学理論
 …いや、別段、アヤシゲでなくても構わないのですが。
 私自身は、wdさんと異なる考えを持っておりまして、やはり、こういった作品であれば、作品中の理論的背景が見たいなぁ、という考えでして。

 加えて、例えば、鶴田の用いている「エーテル理論」自体、実際の物理学で否定されたにしても、実際に他で言われた理論を持ち出している訳で、そういった理論を、同じように持ち出すことでもって「パクリ」とは、さすがに…。

 また、大石の話のつくり自体が、鶴田に似ているのは、事実だと感じておりますし(それで、それをもって「パクリ」といった貶める言い方は、私はしていません。「水惑星…」の冒頭の話はともかく)、SFのテイストを入れていて、その背景の理論を挙げた場合、「これは○○の真似だ」と書いてしまったら、今SFの作品を描いたら、なにがしかの真似、ということになってしまうのではないでしょうか。

 既出の作品があれば、多少なりとも影響を受けるものではないか、と思います。もっとも、その影響の受け方であったり、影響が濃すぎるのはなぁ…、というのはあるかもしれません。ただ、理論を描いたらパクリ、とはさすがに言わないかと。


 小馬鹿にしたような書き方になっている、というご意見、ありがとうございます。

 言い訳ではなしに、本当に小馬鹿にする意図などないのですが…。こちらのブログに限らず、私の文章の拙さから、しばしば、人を怒らせることがありますので、こちらは以後、本当に気を付けたいと思います。
by 粋狂 (2009-05-07 04:58) 

wd

これで書きこむのは最後にします。

まず私は、あなたが最終的に大石まさるを上に見ていようが下に見ていようがどちらでも良いのです。私にとっては、あなたの評価は不当ですが、別にあなたの評価をどうこうしたいとは思いませんし、そもそも私は、鶴田も大石も大好きですから。そして、あなたが大石を少なくとも嫌ってはいないであろうことも(何となく)わかります。

ただし、上の方が不愉快に感じ、私も引っ掛かって思わず書きこんでしまったのは、文章の拙さが原因ではないと思いますよ。

言葉がキツいので前回は書かなかったのですが、前回本当に書きたかったことは、「妥協点はどこか」というタイトルをつけたエントリーで、大石まさる作品を「大量生産・消費に親和的」と評して、よくそんなことが言えますよね、ということです。

「大量生産・消費」という言葉の真意はわかりかねますが、現代思想の見地からも、漫画家の(大量生産とは程遠い)地味で地道な作業という観点からも、通常この言葉を目にした人は「粗製濫造」というマイナスの意味しか思い浮かべることができません。つまり大石まさるは、絵もプロットも粗い、寿命の短い作品をジャンジャン作ってますよ、とあなたは言っているに等しい。

でもそうでしょうか? 私は違うと思います。あなたが違うと思っているかどうかはわかりませんが、いずれにせよ、このような言葉を選んでしまうことは、少なくとも文章力の拙さではないと思います。

そして「妥協点はどこか」というタイトルは、大石には鶴田のような品質は望むべくもないが、鶴田の代用品として、鶴田の作品が出ていない間は刊行ペースの早い大石作品を読むしかないね――という総評にしか読み取れませんが、そうではないのですか?

私は「大石まさる」で検索してここに辿り着いたのですが、とても残念でした。
by wd (2009-05-08 02:03) 

粋狂

>wdさん
 「大量生産・消費」というのは、「商業誌の連載ペース」のことと思っていただければ、と思います。
 雑誌は、熟読されるものというより、消費されるものですので、そのように書いたものです。

 それで、商業誌の刊行ペースに乗せるのであれば、何か犠牲にすることもあるだろうと思い(現実に、鶴田は刊行ペースに乗せられていないかと思います)、私は大石まさるは、描線等で妥協しているのではないかと考え、それをもって「妥協点」としたものです。
 私が、大石の作品を、鶴田の代用として「まあ、妥協できる」という意味は込めておりません。

 ただ、確かに「鶴田の代用品として妥協」、そう読めますね。申し訳ないです。
by 粋狂 (2009-05-08 03:13) 

とおりすがり

> 私自身は、美樹本晴彦と鶴田謙二を、このシリーズから感じました。

ヨコハマ買い出し紀行っぽい雰囲気もありますよね。
by とおりすがり (2009-08-29 16:23) 

粋狂

>とおりすがりさん
コメントありがとうございます。

「ヨコハマ買い出し紀行」、それは考えていませんでした。
言われると確かに、雰囲気が似ているところがあるかもしれません。
時代は近未来、しばしば水辺が出てきて、過去に大きな気候の変動があったと思われること…、辺りが影響しているんでしょうかね。
by 粋狂 (2009-08-31 22:27) 

よんじゃった

鶴田謙二さんのマンガ、キャラが背景に負けている?というのか背景がごちゃごちゃしすぎて見づらいので避けてましたが、プロットは面白くてよい発見をさせて頂きました。
 
by よんじゃった (2011-11-29 03:50) 

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